下衆なマニヤの有神論

小説を書き続け(途中絶筆したが)十云年、自分の力が如何程のものか試したい。

【趣味】映画「ハリエット」鑑賞!

自粛あけてから、まるで息をするように映画を映画館に見に行きまくっています!
それまでもかなり観に行ってはいたけど、今のペースは異常(笑)。週2本は行ってる感じだな。
映画館休業中に観たかった映画がかなり溜まってしまったことが理由の大部分だけど
それ以上に「こんだけ求めてますよー!求めてる人いますからねー!」と映画業界に言いたいのもある。
観てますからねー!!!!!!!!!楽しませてもらってますからねーーーー!!!!!!!

しかし何が辛いって、感想を書きたいのに書き進まないから溜まっていくばっかりですよ!

つーことで今日は「ハリエット」の感想を書きたい。
先日の「許された子どもたち」に続き、実際の事件をベースにしたノンフィクション寄り。

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https://harriet-movie.jp/

【あらすじ 】※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
アフリカ系アメリカ人女性として初めて新20ドル紙幣に採用された奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの激動の人生を映画化。「プレイヤー 死の祈り」の女性監督ケイシー・レモンズがメガホンをとり、「ホテル・エルロワイヤル」など映画でも活躍するミュージカル女優シンシア・エリボが主演を務め、主題歌も担当。第92回アカデミー賞では主演女優賞と主題歌賞にノミネートされた。1849年、メリーランド州。ブローダス家が所有する農園の奴隷として幼い頃から過酷な生活を強いられてきたミンティは、いつか自由の身となって家族と一緒に人間らしい生活を送ることを願っていた。ある日、奴隷主エドワードが急死し、借金の返済に迫られたブローダス家はミンティを売ることに。家族との永遠の別れを察知したミンティは脱走を決意し、奴隷制が廃止されたペンシルベニア州を目指して旅立つが……。共演は「女王陛下のお気に入り」のジョー・アルウィン、「ドリーム」のジャネール・モネイ

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よくぞこのタイミングで放映してくれたなぁ、と感慨深くなるような作品。
自分は元々黒人の出る映画が好きなので当然観たんだが
なんで好きかっていったら、その一つに「逆境に打ち勝とうとするパワー、支える人々」っていうのがあるような気がしてきた。
ポリコレ警察がやってきたら大もめになりそうだから追求はしないけど
自分にとっては「黒人」だの「白人」だの「黄人」だの人種は関係なくて
主人公がいかに戦っているか、というのがポイントなのであって
その琴線に響いてくるのが黒人の人たちの物語が多いというだけだと感じている。
別に黒人の出るものを選んでいるのではなくて、自然と作品がそうなっているというか。

あと、こんなん言うとそれはそれでポリコレ警察来そうだけど
声質や肌の色もそうだけどパーツの作りも全体的に魅力がある。
ディズニープリンセスになったティアナなんて、ドレスもものすごく似合う美しい女性です。
(なおプリンセスいちすてきなのはジャスミンと言って憚らない。異論は認める)
みんな違ってみんないい、でええやん……。
声優だって合ってる人がやったらいいやん。何人でも何色でも別にええやろ。キャラなんだから!


長くなったがハリエットの感想いきます。
ネタバレなので注意

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◆かんっっっぜんに奴隷ですからね!
時は19世紀前半。白人の領主のもとで完全に奴隷として酷使されている一家。
「奴隷黒人」と「自由黒人」には大きな隔たりがあって、過去の契約などによって「奴隷黒人」を解放しないといけないのだが
それが守られていないのが、主人公ミンティの母たち。自由黒人の子どもは自由黒人だ。
本来なら、ミンティも自由でないといけないのに、弁護士を雇ってまで調査をしたその結果を領主が破り捨てる。
なぜなら、奴隷は財産だから!
財産は土地や家畜と同じ。それを売り買いするのも領主の財テクの一つ!
ーーという現実をまざまざと見せつけられ、結構しんどい。
夫との間に子どもを作りたいと思っても、領主にそれを言ったところで
生まれてきた子どもも同じ奴隷になってしまう。

だからこそ、自由を求めたミンティを罵倒し「お前の母親も、お前も生まれる子どもも全て私のものだ!」と吐き捨てる領主。
ひどすぎるやん。どん引き。

プランテーションソング
皆で声を合わせて歌ったり、一人のリードにレスポンスして歌い上げる労働歌がものすごくいいエッセンスになっている。
これは実際に労働をしながら歌われていたものだ。
それを聞いた瞬間に思い出したものがある。
ゲームの名作と名高い「Detroit become human」で歌われていた「Hold on just a little while longer 」だ。
これも、自分の苦境を認識して「耐える」歌だ。同じ時代か、この後の南北戦争あたりで歌われていたらしい。
今回のハリエットでも牧師がよく「Hold on」を言っていたので、やはり何かを変えるのではなく「耐える」ことを強要され続け、諦めるしかなかった奴隷たちのつらさがよくわかる。
もの悲しくも美しく、パワーのある歌声もすばらしい

◆ミンティにお告げ
昔領主が投げた何かが頭に当たって血が出て昏睡状態になってから、神のお告げが聞こえるようになっていたミンティ。
領主が財政難になったこともあり、なんかやたら抵抗してくるミンティを「NEGLO」表記で作ったポスターで売りに出そうとする!
このままでは売られてしまう、もうみんなとも会えないと判断したミンティはとにかく逃げます!
あいする夫や家族を置いて逃げます!犬が負ってこようがなんだろうが逃げます!

そこに、領主の息子ギデオン(30前後)がやってきて「今戻ってくるなら罪を問わない」みたいなのを言う。
このギデオン、子どもの時からミンティに面倒をみてもらっていたのだが、奴隷だと思ってるので扱いがひどい。
「神に祈っているのか。だが黒人の祈りは神には届かない」とか
「お前は昔、俺の為に祈ったな。熱が出て目を開けたときに見たお前の黒い顔は何よりもおぞましかった」
みたいなのを言う傲慢さ。
だがしかしねー、かなりこの人イケメンなんすよね。
しかもちょっとヘタレっぽい雰囲気もお坊ちゃん感すごい。
昔のジョニー・デップっぽい色気もあってすごい好きやなと思った。
なお、結構いろんな表情をみれたわけだが実写のフリン・ライダーはこの人がいいとすげー頭をぐるぐるしていた(笑)


◆190kmかな?一人でほぼ歩いて必死で逃げる。
すげー脚力と精神力
旦那さんにも別れをつげ、いろいろ助けられ、なんとか生きて都会に行き、目的としていたウィリアムにあうことができた。

◆ウィリアム
めっちゃいい人。この人、ミンティなみにいい人。
とにかく脱走する奴隷たちを本気で守ってかくまおうとしてくれている。

◆マリー
黒人だが奴隷でない上流っぽい女性マリー。
始めイヤな人の感じを出しており、ミンティはそんな彼女にいらだちを覚えている様子だが
マリーは決してイヤな人でもなく、ただ「奴隷ではない黒人」というだけだ。
だから、ミンティの立場を哀れに思っても同情はできない。
彼女は彼女のできる支援(ミンティたち元奴隷をかくまい、職をあたえ、淑女のたしなみを覚えさせ自立させる)をするのだ。

◆だがしかし、ミンティは終わらないぜ!
ミンティが助かったのは奇跡だと思っている周囲に対して、もう一度その奇跡を起こしてやると立ち上がるミンティ。
家族を放っておけない、などウィリアムにつっかかる姿は「おいおい、これ捕まってあかんパターンになるやつや」と
思いつつも応援してしまうし、そもそも史実なのでそんな簡単には捕まってどうこうならない!見たか!これが現実だ!

◆んで、自分はここで号泣してまう。
まだ始まって結構早いのに・・・
1年後、ミンティが夫のところに戻った!脱走計画第一段だ!
ミンティをかばったがために潰された片目が痛々しい夫。生きていたことを知り驚く彼をミンティは固く抱きしめるが、なんか狼狽している感じの夫。
「迎えにきたの、逃げましょう」と言っても反応は歯切れが悪い。当然夫の不自然な様子に気づくミンティは、彼の指に知らない指輪を見たーー。
「うそ、うそ・・・」
「ミンティ、聞いてくれ、俺には今妻と子どもがいる」
「さわらないで!
「再婚したんだ」
「裏切りもの!あなたは私を裏切ったのよ!」
「俺は君を愛してた、君が死んだと聞いて絶望に陥った!耐えられなかった!」
「うそよ、こんなの・・・!」
という具合に、ミンティの心がみるみるうちにずたずたにされるのを目の当たりにしてもう、自分は涙腺崩壊。
夫は夫で、本当にミンティを愛してたし拷問を受けても彼女の居場所を吐かなかった。
深く愛していたからこそ、その悲しみは同じくらい深かっただろう。癒しを新たな家族に求めたとしても、彼を責められるものではない。
ただ、ミンティは自分の家族を救うという信念のもと戦い続けてきた。
その心の芯がぽっきり折れるのだ。しかも、幸せを壊しにきた存在として愛した人に認知されているーー。
つらい。辛すぎる。

◆しかしそんな悲しみをぶんなげて、みんなを助けるんじゃい!
せっせと仕事をする奴隷たちに向かい、木陰に隠れたミンティが
即興(?)の歌で相手を呼び、なにを考えているのかを大声で歌う。
それをきちんと理解して察する人たち。心の奥底でなにを望み、どうしたかったのかが痛いほど伝わってきて涙が出た。
ぼそぼそ話し合ったり、計画したりなんかもしない。
いきなり奴隷の作業場に現れたミンティが大声で「モーゼに付いて行け」みたいな歌を歌うと、皆持っていた農具を放って駆け出す。
演出だとは思うけど、緻密に練られた計画など通用しないであろう彼らには急襲が一番良かったのだろうと思う。

◆伝説のモーゼになる
そうしてたくさんの奴隷をつれて逃げるミンティ。
逃がしすぎて、彼女の存在は「モーゼ」と呼ばれる謎の人になった。
モーゼがくると、白人の領主には痛手。だって自分の財産でもある黒人奴隷がいなくなってしまうのだ。
どんどん財産が失われ、くるっていくフローダス家。
いい感じのざまぁ展開。

◆切れるギデオン
モーゼがミンティだったことを知り、周囲の地主に「お前のとこの奴隷がモーゼじゃねーか!弁償しろよ!」と詰められまくる。
切れたギデオンはミンティを本気で殺しにかかるが、今や 坊ちゃん育ちのギデオンよりもミンティのほうが戦いに慣れている。

馬に乗りミンティを追うが見失ったそのギデオンの背にミンティが銃を突きつけ「動いたら撃つ」みたいなんを言うが
ギデオンは持っていたライフルを捨てて小さな銃を取り出そうとし、見事にミンティに指を打ち抜かれる。
「ぎゃわー!」とわめくギデオン。汗だらだらになりつつ、ミンティにこう言う。

「子どもの時に熱を出した俺にお前は祈っただろう。あんなに俺のために祈ってくれたじゃないか」
「俺たちはお互いにを必要としてるーーだから好きだったのかもな」

うわーストーカーきんもー☆
もう、酸いも甘いも知り尽くしたミンティはうんざりした表情。その顔に一切の動揺は見られない(笑)
あたりめーだろギデオン、ミンティさんをなんだと思ってんだよ!小物のてめーは片思いしとけバーヤバーーヤ!
という気持ちにもなる。

結局ミンティは空へ向かって銃を撃ち、馬をパクッて逃走。

◆その後
いろいろあっさり怒濤で描かれる。
南北戦争で先頭に立って戦ったこととか
独身で、意外と長寿で亡くなったこととかが描かれる。


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総評;★★★★☆ ほし、3.6!
パワー溢れる映画だったが、ただ単純にパワーがあるだけではなく常にもの悲しさや息苦しさのある作品だった。
焦点が当たるのはミンティの人生であって、戦争でも人の行きしにのことでもない。
だからやたらと血がでない。
泥にはまみれるけどきれいで、比較的清潔。
別に見せろというわけではないが、もうすこしそういった犠牲があった部分もあったほうが良かったのではないかなぁと思う。

音楽がとにかく心ふるわせる良作でした。