【創作・小説】<完結>某国政府の少子化対策~女に変わるカラダとココロ~
本日、全年齢版の拙作
「某国政府の少子化対策 ~女に変わるカラダとココロ~」が完結しました。
ひとえに読んで下さった皆さま(と、止めようと思っても不屈の精神でやりきったやる気のある時の自分)のおかげです。
誠にありがとうございました。
いつも設定などの語りを完結後にするので、今回もまた備忘録を含めて書きたいと思います。
■書こうと思ったきっかけ
前作はBL(18禁)でした。
自分はその時18禁以外の作品を書けなかったので、全年齢で、しかしただの恋愛ではないものをかきたいとぼんやり考えていました。
つーか前作BLの主人公がかなりの不憫ビッチで、女装させたりして強制的に愛でてたら
自分の趣味がどんどんそっちに行ってしまった感ある。
こう、自分の意思に反して捻じ曲げられる性というか。
この文面がまさに「思いもよらぬタイミングで、望まぬ女性化をする」ということのすべてを物語っている気がする。
■プロット
初め、短編でやろうとしてた……こんだけの長さになってんのによく短編なんて豪語できたな!
アホだな!!!
■変容者
「変容者」という言葉を生み出すにあたり、色々調べて先に使われてないのを確認してから設定しました。
「篩選者」は篩(ふるい)にかけて選ぶ者、というそのままの字面。
■政府
なんか強引にぐりぐり考えてたら政府公認ていうか強制になってた
■ボツ
一度書いたけど、ぜんっぜんしっくりこなくてボツにしたのがこちら。
冒頭「変容者」の説明後、小学生で話をすすめますがそこがもともとコレでした。
これをボツにして、堂島の存在も全部考えなおして現在の形になっていました。
(以下1454文字)
*******************
「なぁ、ニュース見た?」
茶髪をヘアバンドで止めながら颯人《はやと》が言った。右手にハンバーガーを持って、左手でスマートフォンを操作している。
「なんのニュース?」
大誠《たいせい》が身を乗り出した。
颯人が無表情で見せた画面には美しい女性の写真が載っており、そこに『スクープ! 超人気アイドルグループ「DASH」 メインボーカル前原《まえはら》 裕哉《ひろや》 活動停止の間に変容者《へんようしゃ》に!』と書いてある。
大誠は驚いた顔をして、画面を触った。
「おい、ポテト食った手で触るなよ」
颯人が嫌そうに言うと画面をナプキンで拭いた。そうして、スマートフォンをスクロールする。
女性に変容した芸能人の前原《まえはら》は石油産出国の富豪に見初められ、即第二夫人になったらしい。幸せそうな写真が複数枚載っていた。
「うわ、すげぇ」
様々な色の宝石が付いたアクセサリーを身にまとい、まるで外国の映画スターのような濃い顔の男性と一緒に並んでいる美女姿を見た大誠が純粋にうらやましそうな声を出した。
バクバクとハンバーガーに食らいつきながら、颯人も画面に見入っている。スクープの文面を読みながら言った。
「前原裕哉《まえはらひろや》って何歳だっけ」
「そこに書いてあるじゃん……十八歳だって」
「あー、じゃあ変異期間ギリギリだったんだな」
「遅いくらいじゃね」
そう言って、大誠がジュースをストローで吸い上げている。
「なぁ、知ってるか。C組の堂島《どうじま》の母親」
意味ありげに目線を向けた大誠に向かって、颯人は呆れた表情を浮かべた。
「知ってるよ、変容者だろ?」
「え? 知ってんの?」
「当たり前だろ、あんなキレーで若い母親いるわけねーだろ」
「すげーよな。なんか、堂島に聞いたら、母親は十七歳で変異して、すぐに地主のオッサンに惚れられて結婚したらしい。まぁ、それが堂島のお父さんだけど」
その情報は初耳のようで、颯人は「えー?」と言うと眉をひそめた。
「変容者になったからって、男のことなんか好きにならねーだろ」
「だよな」
「堂島も、まさかなぁ」
颯人の頭の中には、いままさに変容をし始めている同級生の堂島《どうじま》 傑《すぐる》が浮かんでいる。
母親が変容者である堂島はもともと小柄で色白だった。女子からも「かわいい」といじられるキャラクターで、本人もまんざらではなかったのだが、母親の影響があったのか無かったのか、堂島本人も十七歳になった頃に変容しはじめた。
「変容ってさ、本人が『あれーオレおんなじゃねー?』って思い始めたら一気に進むらしいぞ」
大誠がつまんだポテトを振りながら説明している。颯人は興味なさそうに「知ってる」と答えている。
二人が通う高校では、堂島と同じように二名の男子生徒が変容していた。すでにすっかり美少女として学園生活を送っているが、いまいちしっくりこないようでたまにガサツになる者もいる。
しかし全員に共通しているのは、圧倒的なほどの美しさと、それを放っておかない男がいるということだ。それぞれにはすでに「彼氏」と「取り巻き」や「パトロン」がいた。
「堂島も彼氏つくんのかな」
大誠がぽつりと言った。
「なんだよ、大誠、立候補すんの?」
ニヤニヤと笑った颯人に向かって、大誠は赤い顔を横に振る。
「ふざけんな、ありえねーよ!」
「あはは、そうだろうな」
「堂島だろ? もう……堂島にしか思えねーよ」
「そうだよなぁ、堂島にしか思えねーよな」
当たり前のことを言いながら二人で笑う。
似通った背丈の黒い詰襟を着た二人の男子生徒は、肩を並べ、そうして十八歳を乗り越えた。
*****************
これをボツにしたのは、根本的におもんなさそうっていうのがあったのと
これだと颯人が変容する大学生までの期間が短く、心の準備ができているように思われかねないと思ったからです。
■なんかもうしんどいってなった時期
たぶんこのへんで(書き進めずにやめた方が自分の未来のためなんじゃね)と本気で思ってました。
18禁BLの時は、読者が少ない割には感想をいただけたりと、小さなコミュニティの中でも皆で夢中になっている感があったので
へこたれそうでもなんとかそこまで愚痴らずやれていたんだが、それもあまり無くテンションの下がりっぷりは危なかった。
でも書ききったのも自分のためになることでした。がんばった。
■印象に残ってること
前作を書き終えたときにはもうめちゃくちゃ書きたいシーンがあって
それが「変容者ソムリエ」のド変態が出てくるシーンでした。
颯人を暴行しようとしてやり返されたときのセリフ
「いてて、力強いね! ――まだ、あんまり
が書きたくて書きたくてたまらんかったんです。
書けたときの喜びはすごかったなぁ。
<キャラについて>
■仙波 颯人
名前は爽やかな感じを目指した+男だけど女になってもかろうじてどうにかなりそうな名前にした。
彼女もいたしゲイではないけど、幼馴染の大誠に友情以上の感情を抱いているという絶妙なライン。
大事だからこそ大誠の恋を本気で応援するいじらしさも欲しかった。
変容するまでのやんちゃさと傲慢さ
変容したときの動揺、恋に落ちたときの混乱
自分が愛されていることを認識したときの喜び
プロポーズを受けたときの感動、結婚式の感謝
母親になってからの強さ
全部書ききれて感慨深いです。読み返すと初めの颯人は結構むかつきます。
■國原 大誠
剛健な感じの名前で、とにかく真面目な朴念仁にしました。
当初はもっとウェイな感じをイメージしてましたが、堂島にずっと片思いをしていたという純粋さから
「ウェイはないわー」という自分の心の声が聞こえたのでこうなりました。
手品は、子供のころから大人になっても変わらない彼の大事なアイデンティティです。
大人になってからは、バーのお客の女性から遠回しに誘われているのにまったく気づいていません。
■堂島 碧良
名前の堂島は早々に決定していました。
自作でなんでか「地名・駅名」が名前に入ることがこだわり(?)なんですが
お分かりの通り大阪の地名の堂島です。堂島ロールとかでおなじみ。
碧良(あおい)は、女性でも男性でもいける名前で絶対に呼びたい響きでした。
「良」の字は他の候補もありましたが、姓名判断が良くなかったので「良」に決定しました。
なお「國原 碧良」でもいい運勢になるようにしてます。
最終ギリギリまで困ったのは「碧良」の本当の読み。
あまり納得いかないまま「あおよし」で一旦決めてたんだが、「良」の文字だけで「はる」と読むことに気付き
「あおはるじゃーん!」ということで決定。
そして堂島が、一番始めのキャラ迷走すごかった。
プロットを組んでも、なんかしっくりこず変更しまくりました。
<第一堂島>
完全に男だが色白、かわいい感じ。堂島 傑(すぐる)という名前のいかつさあり。性格は貧弱で守られ体質。
変容前から変容後までをしっかりと同級生に見られているという……なんかやだ……。
さらには大誠に恋をされるが、上記の通り「変容している」ことを全員が認識していたので
そこから大誠だけが恋に落ちるか?というのが微妙だった。
なお好きでもない大誠を体で籠絡する。アカーーーン!!
<第二堂島>
変容者だと偽った女。
なんの苦しみも知らず変容者を名乗るそんな女に、変容者になった颯人が理解されたいと思うのか?思わねーー!!!!ってことで早めにボツ。
<第三堂島>
変容者。ガチガチの攻めで性格が強烈。この性格は第四堂島に引き継がれている。(以下ボツプロット)
* * *
堂島に「私、大誠と付き合うことにした」と言われる。「はぁ?大誠はそんなこと一言も言ってねーけど」「言い辛いんじゃないの?」「オレに言い辛い事があるわけ無いだろ、妄想も大概にしろ」と言い放つ颯人。堂島にやにやと笑う「ごめん、大誠のことオトナにしちゃった」「私本気だから」
大誠に会う颯人「大誠、さっきオレ堂島に会った」大誠あわてた感じ。颯人苦しい表情「付き合ってんの?」大誠真っ赤「あー……うん」で、ヤッたことが露呈してくる。呆然とする颯人。
堂島対して颯人「あいつを弄ぶのやめろよ」「はぁ?言ったでしょ、私本気なの」「変容者が一般人を好きになるわけねーだろ」堂島「あんた勝手に私のこと決めないで」真剣に怒る表情。
* * *
くそビッチだぜー!
<第四堂島>
変容者と偽った男性(心は女性)で性格は強烈。ガチガチの攻め。だから颯人のことをガンガン攻める。
変容前の颯人とは丁々発止のやりとり。(以下、ボツ文面やプロット)
* * *
わずかに責めるような瞳を向けてきた堂島へ、颯人は鼻息を吹き出して言い切った。
「だいたい変容者なのに大学進学してんじゃねーよ」
「は? なによそれ」
明らかに堂島は気分を害しており、言い返す口調は強い。
* * *
つよい!なお18禁の方のボツプロットでは、第四堂島は婚約後に颯人を堂島開発の事務員にして会社で(略)
制服のスカートたくし上げて(略)
という、超肉食の感じでした。
<最終形態DOUJIMA!>
そんなこんなを経て、堂島が仕上がりました。
颯人の苦しみを理解するには、自分を抑制する努力と優しさが、そして「自分が愛している人を愛する人」をひっくるめて愛する強さが必要だった。
そのキャラを構築していくうち、童貞の大誠はオドオドしはじめ、堂島はもじもじしはじめ
二人のモダモダに颯人がやきもきする構図が出来上がりました。
■坂崎 杜環
シュッとした感じの苗字。杜環は作中でもあった通りの名づけ理由です。
あとこう、ちょっとふわっとした名前でインパクトのある、でもそこまでキラキラっぽくない感じを目指した。
瑠璃ママを憎んでましたが、憎むのをやめた純粋なチャラ男。
杜環の未来は、建築デザインを心理学面からも研究しつつプロジェクトメンバーとして実績を積み
アメリカで独立後二十七歳くらいで某国に戻りいくつか企業の建築を手がけて数年後
堂島開発から公園のデザインを打診され複数のデザイン事務所と戦いコンペで権利を勝ち取り、とうとう公園の完成にまで至る。という感じ。
なお、杜環という存在が生まれたのはギリッギリでした。たぶんけっこうなところまで書き進めてから、ボツにしたから、しばらく杜環という存在すらなかった。
その代わりにいたのが……杜環+工藤医師みたいなキャラです!!
■杜環+工藤医師のCEOキャラ
まるでハーレークイーン(読んだことは無い)のような俺様金持ちキャラ。ソフトマッチョで鍛えている。
突然出てきてなんかよくわかんない感じのキャラだったからプロット書いてすぐにやめた。
* * *
(※旅行に行った先でで大雪になり帰れず、親切な人が宿を取ってくれたがそのホテルのCEOで颯人をスイートに連れ込もうとしてるのを大誠が止めに来る)
CEO「お前はなんのつもりだよ、いつまでこの子を飼い殺す気だ」と言う。
颯人はCEOの肩を抱く手や完全に女性であることを意識させられる。(諦め)
呆然とする大誠。秘書に止められるまま、CEOにつっかかるのをやめてしまう。絶望する颯人「馬鹿大誠!大誠の馬鹿野郎!」泣きながら叫ぶ。諦めたように力が抜ける。CEO「いくじのないやつだな」
大誠「颯人……颯人、行くな!」手を伸ばして掴む。「お前が嫌がってるなら行かせたくない」
颯人「……こんなときでも、俺の気持ち次第なのか」悲しそうに言う。颯人「CEOさん、行こう」悲しそう「もう、いいんだ。俺は、あんたと泊まる」唖然とする大誠「うそだろ、颯人」「うそじゃない。俺は、俺の幸せを見つけないといけないから――大誠も、大誠の幸せを見つけて」「おれ……は、もう、お前が知ってるハヤトじゃない」悲しそうに笑う顔が美しい。「さようなら」
背を向けて去っていく。
(室内)口を押えて泣いている颯人。CEOが肩を抱いて部屋の中に入れる。ソファに座らせ「何か飲むか」と聞いても答えない。「ずっと泣かれているのは、俺もしゃくにさわるよ」と言ってハンカチを渡す。颯人、受け取って鼻を噛む。CEOに「レディーの作法じゃないな」と言われてグッと申し訳なさそうにする。その時点で女の気持ちがかなり出ている。CEOが颯人の顔をじっと見る「美しい。化粧をしなくてもその美しさなのか」と言う。「あんたは、どうして俺を」「オレ、じゃない。私と言いなさい」「――どうして、わ……わたし、を」と言うとCEOが「美しいからだよ」と言い切る。颯人の長いまつげが瞬く。
* * *
結局颯人はここでもちゃんと貞操を守れる感じで、そこは工藤ほど悪いやつじゃないので杜環感ある。
っつーね。でも全然面白くないよなこのキャラ。でもCEOがいたから杜環と工藤が生まれたと思ったらありがとうCEO!
■アキ
褐色がかわいい(笑)。ていうかかわいい褐色少年(少女)を書きたかった感すごい。
しかも闊達。たまらぬ。
■その他
気になるキャラいたらTwitterとかでも気軽に聞いてください。なんかあるかも。
■終わり方
ハッピーエンドなのかどうか、正直良く分からん感じにしてます。
ていうのも、政府(巨大組織)が後ろにいる問題って解決に物凄い時間がかかるわけで
それを颯人がチョイチョイしたからといって解決できるわけもない。
それに颯人がその先陣に立つと「変容者が得た平凡な幸せ」が失われてしまう。
颯人が望んだのは目立つことでも自分が担ぎ上げられることでもなく、愛する人と一緒に普通の生活をすることだ。
だからきちんと時間をかけて、そのあたりは世間的には改善していく方向性を見せたかった。
一方で組織の腐った部分はぐずぐずと根を張ってますよ、という感じです。
■未来(ぼんやりした設定)
大誠の子供である優誠を産んだ颯人ですが、年子で堂島の子供(男女未定)を産みます。
そしてさらに3年後くらいには、杜環の子供で双子?(男女未定)を出産。
皆で集まってわいわいご飯食べたりもします。
堂島はあおママと呼ばれてます。
大誠が、杜環の子供の授業参観に行ったりもします。
杜環は子供たちから「杜環」と呼ばれてます。アメリカナイズされているので杜環は平気。
なお、颯人34歳くらいで堂島開発経由で51歳くらいの会社社長と出会ってしまい、グズグズに抱か(略)
とかややブラックなイメージも持ってます。だって変容剤があるんだもの。仕方ないもの。
ただ、それでも颯人を信じて愛し続ける彼らは変わりません。
そんな感じです。
また思い出したりしたら追記します。
あと、描いていただいた絵とかまとめてちゃんとしたい!
なのでまた後日、更新します。
自作はWEBで書くより公募に気合を持っていきたいなぁ。
皆様本当にありがとうございました!