下衆なマニヤの有神論

小説を書き続け(途中絶筆したが)十云年、自分の力が如何程のものか試したい。

【趣味】サプール写真展~平和をまとった紳士たち~

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http://dmdepart.jp/sapeur/sapeur_photo.html

非常に興味のある分野だったので、見てきた。
<サプールとは>
今なお内戦の続くアフリカコンゴで、90年以上続く独自文化“サプール”。 世界最貧国の1つと言われる暮らしの中、1ヶ月の収入をはるかに上回る高額なブランドスーツを身にまとい、街を練り歩く男たちがファッションを通して平和のメッセージを発信しています。
(大丸松坂屋 写真展サイトより抜粋)
という人たちです。

貧困や、劣悪な環境の中でも、楽しむように自分たちの無言の主張をするその姿を自分が知ったのは
たぶん去年だったと思う。
思った感想はまず「これどこから手に入れてんだろう?」だった。
彼らの思いなどは知らないまま興味を持ち、引き付けられた。
その時点で、きっとすでに自分はサプールの意のままだったのだろう(笑)。


そうして行ってきた写真展。
平日にも関わらず、そこそこの人が居た。誰かが出ていけば、必ず誰かが入ってくるような状態。
決して混雑はしていないが、がらがらでもないちょうど良い状況だ。

大量のフォトパネルが展示してあるのだが、紳士たちは非常におしゃれだ。
ある部分ではブランドをこれ見よがしに見せつけながらも、違う部分は高級ブランドをさりげなく使っている。
異なる素材感や柄を、非常に上手く、美しく合わせているのは驚きである。
彼らは別に雑誌を読みあさって勉強しているわけではない。
先人からの教えとともに培われたサプールとしての血がそうさせているのだ。


灰色の背景の街の中で、彼らの鮮やかなスーツの色は衝撃的だ。
汚泥の溜まった足元に、ピカピカの靴が反射する。
青空の下に放置されたゴミだらけの土の上におもむろに置かれたソファにふんぞり返って笑う。
完全なアイロニーの上に成り立つ芸術だ。

彼らがもし、ふつうにフランスの街にいたら?
貧困とは無関係な場所で活動していたら?

それはただの道楽(趣味)でしかない。なんの社会的なメッセージも生まれていないだろう。

戦乱の渦中であり、貧困であるからこそ生まれている強いメッセージ性は、彼らがその状況だからこそ芸術たりうるものだというのが
今回の写真展を見て自分が思った感想だ。


彼らが、そんなメッセージを発しなくても済むような、平和が一日も早く訪れる事を祈りたい。
彼らが、ただの、ふつうのおしゃれさんになれますように。