下衆なマニヤの有神論

小説を書き続け(途中絶筆したが)十云年、自分の力が如何程のものか試したい。

【趣味】映画「ドリーム」鑑賞

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他の映画を見ていた時の予告で見たかった「ドリーム」を鑑賞しました。
見たかったのは、映画の雰囲気が前向きで「自分の前に立ちはだかる壁をぶちこわす系」とふんだから。
あえて平日の高いたっかい鑑賞料の時に行ってみた。

【客層人数】男女比5対5。女性が主人公だが、NASAが舞台であるため男性も見やすいのだろう。
 埋まり具合は二割くらい。

さて、ネタバレありの感想を書いていきたい。

【メインの主人公キャサリンめちゃ頭いい】
 幼少期から頭が良かったのに、黒人ということで簡単には進学もできない状況。
 そこから、本当に自分の実力でのし上がるキャサリン格好いい!
 二人のお嬢さんも、母親思いで優しさがあり、関係性にも感動する。

NASAの非白人への仕打ちひでぇ】
 トイレは「白人」用と「非白人」用に別れている。黒人はもちろん、ヒスパニックもアジアンも全員非白人!
 それどころか、職場自体もメインの白人が働いているところから800m離れたところに非白人の部署がある。
 そこに伝言をしにくるえらい人の秘書もめちゃ嫌々である。

 キャサリンは、その遠いところから白人の部署に移るのだが、そこには非白人用のトイレしかない。
 だから、トイレに行きたくなったらダッシュで800mむこうの元部署まで戻る。そして、またダッシュで戻ってくるのだ。
 珈琲サーバーから珈琲を注いで飲んでいたら、後日勝手に「非白人用珈琲」という小さなポットが置かれ、しかもその中身は空である。

 「黒人だから差別されてあたりまえ」「黒人だから我慢しないといけない」そう思って生きてきたキャサリンはそれらの仕打ちにも耐えるが
 仕事内容がいよいよせっぱ詰まってきた時、いつものように雨の中を走ってトイレに行き戻ってくると、とうとう上司から「いつも抜け出してどこに行っているのか」と詰められる。
 そこでキャサリンの怒りと悲しみが爆発する。
 「知っていましたか、非白人のトイレは800m先にしかない!」
 「黒人だからと服装も指定され、アクセサリーはパールのみと言われたけれど、そんなの黒人の給料で買えるわけがない!」
 「誰も私にコーヒーを入れようともしてくれない!」
 「そんな中で仕事をしているんです……だから、許してください。800m先の非白人用トイレを使用しに戻る事くらいは」
 理不尽な差別に生まれた時から苦しんできた感情が、彼女の表情から伝わってくるシーンだった。

【その後の上司(ボス)のハリソンさん】
 くそ厳しいと有名なハリソンさん。
 しかしキャサリンの訴えを聞き、キャサリンが出て行ってしまった後にコーヒーサーバーに眼をやると、そこには小さなポットに「非白人用」と書かれている。
 特にそれを誰がやったかなど責めることもなく「知っていたか、彼女の話」みたいなのを誰にともなく言う。
 このシーンすげぇ格好良すぎてたまんねぇっす。
 感情をみだりに爆発させるのではなく(すでにキャサリン大爆発してるからここでハリソンさんが切れても濃すぎるし)
 静かに、そして自分をも責めるように小さく言っているのがすごい空気だ。
 自分が白人であそこにいたらビビって漏らしとる自信がある。

 翌日、キャサリンが出勤すると部署のところのトイレ前で轟音が。
 なんぞやと覗くと、なんとハリソンさんがでかいハンマーのようなものでトイレの「非白人用」の看板をぶちこわしている!!
 鉄製で、がっちり付いた看板が、ハリソンさんの振りかぶるハンマーのようなものでゆがんでいく!
 ハリソンさんはなにげにガチムチなガタイをさらしながら、その太い腕でハンマーのようなものを振りかぶる!
 通路に飛び出た看板がガラガラと音を立てて落ちると、ハリソンさんはハンマーのようなものをガランと放置して
 「これでもう、誰のトイレでもない。誰が使ったっていい」と言い残して看板をずるずると引きずって去っていく。
 その背中の格好よさたるやすげぇわ!!
 ハリソンさんは終始イケシブ親父ですばらしかった。

【人種差別、NASAの仕事、恋愛、盛り込みすぎてブレとるような……】
 当時本当にそうだったのだとは思うが、映画の濃さが
 「人種差別6 NASAのお仕事2 恋愛1 女性差別1」という感じで
 NASAの凄さや仕事の凄さというのがやや印象が薄く感じられたなぁ……。
 それもこれも、人種差別に関することが実際に多かった、あとはそれを見ていた自分への衝撃も強かったからだと思うのだが。

【黒人のデモに対する黒人の思い】
 主人公の一人メアリーには息子がいるが、一緒に出かけていた時にデモに遭遇する。
 看板を掲げて荒々しく声を上げる男たちを見ながら、彼女は息子を隠すようにして「見ちゃダメよ」と言う。
 同じ人種だとしても、考えることも違えば表現方法も違うんだよなぁ、と改めて思わされた。
 それって結局イスラムへの偏見とかそういうのと一緒だよなぁ、とも。

<総評>
 黒人である、女である、そのことのハードルの高さを諦めない気持ちで乗り越えた女性のパワー溢れる強い物語だ。
 ……と思って、史実を調べてたら、なんと彼女達がいたころのNASAはすでに「白人」「非白人」といった施設はなくなっていたとのこと!!!!!!!!

 な く な っ て い た と の こ と !!!!!!!

 これ大事ですわ、おおごと。話の根幹から覆るじゃろ。
 そういった施設が無かったにも関わらず、差別や偏見はあったと思うのであの描写すべてが嘘だとは思わないが
 「組織としてそういう体制だった=そこで働く人の感覚も組織に基づいている」とまずミスリードさせるじゃないですか。
 その認識で見るものと、その認識が無いものでは相当違うと思うんですよね。
 メインがその「仕事」であることを考えると、やっぱりかなりの根底がひっくり返されとる!
 うーん、なんかこう……それを知ってしまうと納得できんというか……
 いい話だったことには違いない。

 ★★★☆☆(かぎりなく2.5に近い★3つ)
 なんかだまされた感←しつけぇ






いろいろ映画を見ていて思ったが、自分は基本的にノンフィクションが原作(史実)としてある作品が好きらしい。
それは自分が好きな映画のトップに挙げられる「最強のふたり」もそうだ。
黒人の使用人として雇われた主人公が、当時の黒人に対する偏見や「ただの召使い扱い」を受け入れながらも
心の奥ではあらがい、純粋な心でもって打開しようとするパワーと人を思う優しさに溢れている。

史実にしか語れない説得力というのがある。