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下衆なマニヤの有神論

小説を書き続け(途中絶筆したが)十云年、自分の力が如何程のものか試したい。

【生活】日雇い労働者という状況

【趣味】 【創作・小説】 【ネタ】

先日(23時すぎ)、仕事から帰宅しようと駅に向かい歩いていたら、前方から来た男性とすれ違った。その時、蚊の鳴くようなか細い声を聞いた気がして3m程行き過ぎてから振り返ると、男性は自分の方を見ていた。
自分が歩いていた場所は有名な繁華街ではあるが、裏道のため決して明るくない。人通りも少なく、職場の同僚は男女問わず「夜にはあそこは通らない」と言う人もいる。
そんな状況で対峙する男性と自分。
「はい?」と言うと、男性が近寄ってきた。男性は推定50歳、自分よりも小柄である。服装は全くもって普通だが、まぁよくいる小汚いオジサンだった。肩掛け鞄と、ものが詰まった紙袋を持っていた。
「あの、○○区の○○から、日雇いで来たんですけど、ネットカフェに行こうとしたら、土日の料金になっていて、足りないって言われたんです。明日には給料が入るんですけど」
「はい」
男性が細くちいさい声で言うため、耳を傾けながら聞くと、同じトーンで話を続ける。
「市役所にも言ったけど、土日でやってなくて」
「はい」
怪訝な顔をしていた自分に訴えかけようとしたのか、男性は自身の太ももを軽く叩くアクションを交えて言った。
「さっき蹴られて、持ってた4万いくらも盗られたんです」
「え、蹴られたんですか?」
「はい、太ももをすごく」
「警察行ったんですか」
「行ったけど、防犯カメラがないとダメだって言われたんです」
「調書も取られずにですか?」
「はい」
その時点で、そもそも懐疑的だった自分は正直腹が立ってきた。
日雇いだの、金がないだのという話は本当なのだろう。しかし時系列で考えればおかしな話の流れなのだ。
市役所に行ったのはいつなのか。市役所に行こうと思うくらいだから昼間だろう。
一方で、金が盗られたというのは先ほどだ。市役所に行った時点では4万いくらを持っていた事になる。何の不自由も無い状態で市役所に何をしにいったのだろうか。金絡みでなければ今「市役所に行った話」を持ち出す必要も無いではないか。
警察の話をほじくられる事を拒むように男性が切り出した。
「とりあえず今日あと300円あればいいんです」
「はい」
「300円もらえませんか」
「すみませんが、自分は、自分で稼いだお金をあなたにあげようと思えません」
「そうですか」
あっさりと引き下がり、背を向けようとした男性に「もう一度ちゃんと警察に話したほうがいいですよ!」と言うと、男性は頷いた。

男性に悪意があったかどうかは定かではないが、少なくとも騙す意図はあったとこちらは認識している。
そういう男性と接触したという事柄がある一方で、「日雇い労働者」というワードが自分の中で一つ気にかかるモノとして残った。
日雇い労働者がネットカフェで寝る、という「ベタ」だが十分に「現実に起こる(起こりうる)」話は、社会の歪の部分に位置している現実だと思う。
自分ひとりの力ではどうしようもないかもしれないが、まずは一つ考える切欠になった。
男性に幸多からんことを祈るばかりだ。