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下衆なマニヤの有神論

小説を書き続け(途中絶筆したが)十云年、自分の力が如何程のものか試したい。

【趣味】映画「怒り」鑑賞

【趣味】

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どうも、虎太郎です。

先日映画「怒り」を鑑賞してきたのでネタバレとともに感想を言いたい。

「怒り」の李相日監督作品は、2010年に「悪人」を鑑賞した。当時九州にいたのだが、福岡の見知った景色が映るとテンションが上がった。安っぽい人間だ。

その時の全体的な印象は、海をとても感情的に映す監督だなぁ、というものだった。海上の冷えた空気、避ける事も出来ず灯台になだれ込む寒気……以前自分は映画の「パフューム」が好きだと書いたが、どうやら匂い立つ映像が好きらしい。

一方で「悪人」そのものの感想としては「馬鹿だなー、ちゃんと出所してからマトモに生きろよ、罪を償わない奴にマトモに生きられる訳がないだろ」と思う情の無いもので、映像や演者の凄さに圧倒されつつもいまいち感情移入はできなかった。

さてその李相日監督の「怒り」は、自分にどんな思いを抱かせたのか感想を書きたい。

 

<鑑賞条件>

◆鑑賞人数:一人   ◆時間帯:夕方

◆館内状況:観客5割 (うち男女比1:4)

◆原作:未読

<ざっくり>殺人事件の犯人(男)が逃走し全国に指名手配される中、同時期に日本の3か所で同じく出自不明の男が現れ周囲の人と関係していく。

 

さて、まず原作を未読である&なんの前情報も持っていなかったため、頭が真っ新の状態で鑑賞してきている。これを読んでいる方で「お前何言ってんだ?」と思う事があれば申し訳ない。無知が成した愚考であるためご容赦願いたい。

 

●千葉編に関して

①千葉……?

 まず、現場が千葉だという事を知ったのは鑑賞後、作品について調べていてからだった。観ている時は、千葉だと全く思っておらず、なぜか北陸~東北くらいの頭でいたため、愛子の服装を見ているとやたらと「寒い!寒いなこれ!」と思い込んでいた。千葉であることの説明や映像が無かったように思うが、千葉でないといけないというわけでは無かったのだろうか。

②登場人物が腹立つ 

 仕方ないのだ。仕方ないと思いつつも、そして可哀そうだと思いつつも、また一方で愛子を純粋で愛しいと感じつつも、正直言って腹が立った。MAX腹が立つのは愛子を呼び捨てにし、愛子の父を「おじちゃん」と呼ぶ女だ。他人様の事情に勝手に入り込んで、勝手に愛子に田代の話をするなどひどすぎないか。また、父親も田代が殺人事件の犯人じゃないかと疑うのはいいが、それを愛子(ちょっと頭が弱い)に話をするのは「正気ですか!」と言いたくなる。それを聞いた愛子がどう思うか、どう行動するか、自分の娘なら解るだろうに。まぁ、分からなかったから娘が家でして風俗に落ちるまで何もできなかったのかもしれないが。

 本来であれば、自分で田代の指紋がついたものなどを入手して警察に持ち込んでみるのが得策だと自分は思う。異変に気付いた犯人が逃走することも考えて、あくまでもひっそりと動くべきだ。全員がワタワタ、オタオタしていたのに非常に苛立った。

 愛子はただ単純に「見た目はオトナ!中身はコドモ!」というよりも極度のぶりっこ(死語)という感じが漏れ出ていてイラついた。

③田代が自分の話をした意味が解らない

 自分の事を喋らない田代。周りを巻き込みたくないから、自分の事を喋らない。しかしそれなら、愛子に過去の話をする必要は無かったのではないか?冷たいようだがその覚悟があるなら一人彷徨って逃げていればよい話である。だが、人間というもの愛情を欲してしまうわけで。だからこそ田代は愛子に過去の話をしてしまった。

 しかしだ!本来であれば、愛子がちょっと弱い子だという事を鑑みても、父親と一緒にいるところできちんと話をするべきではないだろうか。愛子に話をしても、何も動くことはないし解決もしない。ということは話をした意味も無い。むしろ愛子づてに父親に話が漏れるというリスクを負う事は非常に恐ろしい事だと思わなかったのか?

マツケンはいい男だ

 指名手配の絵に絶妙に似ていたり、似ていなかったりするがいい男だ!

 

●東京編に関して

①東京……?

 千葉編に引き続き、坂の多い描写を見ていて勝手に横浜あたりだと思い込んでいた。まあ、横浜あたりであれば東京との差は微小なので問題ではないのだが。

②優馬と直人の出会いとセックス

 ゲイである優馬が、ハッテンバで直人に出会って強引にセックスするわけだが……あれは「諦めを中心にした合意」であると考えると辛くなった。直人は本当に嫌だった時の抵抗の仕方でもないし、ガチであんなんやったら殴り合いの喧嘩になる。あれだけの成人男性が組み敷かれて易々とやられるわけがない。BLでもあるまいし。←DISではない

 そこで直人の諦めが浮上してくる。自分の人生にも過去にも、全てを捨ててしまっても構わないという気持ちの時、自分を欲するものがあれば、それが一時の逃避だとしても縋りたくなる。

③優馬の家

 すげーマンションに住んでるな優馬。セックスアンドザシティを彷彿とさせるセレブっぷり!勝手に推定、家賃35万。そこに上がり込んで普通でいられる直人がすごい。

④優馬とお母さん

 始め、優馬はお母さんの病気に向かい合うのを拒んでいた感じがする。病室で出会い系アプリを弄るのも、迫りくる現実からの逃避ではなかっただろうか。しかし直人が現れ、自分の母親の話に耳を傾け、また母親が信頼をして笑顔を見せる姿を見て、しっかりと前を向き、現実を見るようになる。直人と出会わず、ただ逃避をしていたらと思うと、まだ母親への気持ちは救われているように思う。

⑤コンビニ飯が水平に持てなくてモタモタする綾野剛

 むっちゃかわいい。ただし、綾野剛自体は個人的好みから外れる。また、直人のあまりシャッキリしない具合も好みから外れる。

⑥過去を話さない直人

 「どうして過去をちゃんと話さんねや」シリーズの直人。しかし、直人の場合は気持ちが解る。自分の先も短く、未来に責任が持てない。また話せば同情を買い優馬の気持ちに無用の変化を齎す可能性がある。そんな事を引き起こすくらいなら「ただの自分」というものを見てもらいたかったのではないだろうか。と、自分は感じた。

⑦高畑さん……

 女優の高畑さんが出てきた。まぁ、直人との疑惑の人なわけだが、アップになった時に黒目コンタクトが異様に見えた。もっと純粋そうな印象にした方が良かったんじゃないかなぁ。どうして黒目コンタクトなんぞ入れたんだろうか。不自然だ。

⑧最後

 泣きながら町を歩くブッキー。あんないい男がワンワン泣いてるのに、誰も振り返らないし素通りしているのに違和感だ。リアルにしろとは言わないけど、他人から見られる自分などお構いなしに感情をあふれさせたシーンなんだから、もっと周りからじろじろ見られても良かったと思う。

 それにしても、自分が直人を信じられなかったばかりに、直人の遺品を一つも持たない優馬の辛さはいかばかりか。自業自得とは言え悲しすぎる。

 

●沖縄編に関して

①海がきれい!

 「悪人」の時から思っていた、李監督の海描写の美しさが遺憾なく発揮されている。黒くてキッタネーのはヒッピー風の森山未來だけだったため、暑さはあまり感じなかったが爽やかさが素晴らしかった!

②設定がよくわからん

 タツヤくんが酒を飲んで泥酔するシーンで、「あれ?この子たち何歳?」と思い始め気になり悶々とし始めた。高校生くらいかと思っていたが、成人なのか?成人にしては子供っぽくないか?

 また、居酒屋で子供が普通に飲んで泥酔している感じにも違和感を覚えた。根本の人間の設定が分からないから、展開のどこに「違和感」を覚えるのが正解なのか非常に戸惑った。高校生なのであれば、制服なのか、または勉強の話なのか、せめてそういうところを入れてほしいと思った。

③泉が無防備すぎる

 これ言い出したらもうアレですけど。島に住み着いている謎の男の所に土地感も無いのに一人で通うってどういうことなんですかね。「女としての危機感の無さ」といより「人間としての危機感の無さ」が気持ち悪くてたまらんかった。今時子供でもあんな無防備さらさねーよと。そしてその後の事件を引き起こすための道具が「安易な少女の人を信じる純粋さ」というのが安っぽくて腹が立った。

 それらは結果、泉本人が嫌悪する母親にも繋がる「性差」を露呈することになる。

④すずちゃん

 すずちゃんはすごく可愛いと思ったが、端々に感じるぶりっ子(死語)が気になるため、別にすずちゃんで無くても良いのではないかとおも……ウッ頭が……

 もっと普通の顔で、演技力のある舞台女優みたいな子の方が説得力出たように思うなぁ。すずちゃんは本当に可愛いので、例のシーンでも「可愛いから襲われます!」と思えてしまうのは自分がゆがんだ見方だからか?そうじゃない、誰でも、どんな人でも事件に巻き込まれる可能性があるという部分が薄れているように思えた。

森山未來

 やたら男くさくなっていてびっくり!山田孝之を彷彿とさせる変化に驚いた。そしていい感じの狂った様子。

 しかしなぁ、この「サイコパス」的な表現がなんかなぁ……。別に森山未來の演技がどうとかいうわけではなくて、突然宿を壊して「さあ発狂しましたよ皆さん!」的な展開に首をひねる。それまで、実に微妙な心の動きを描いていたのになんだか勿体ない……。

⑥沖縄問題

 米軍基地はんたーい!の活動を少しではあるが描いている事に驚いた。あんな感じで、本当に現地でも反対運動をしているのだろうか。

⑦沖縄問題2

 そこにもってきて米兵のレイプだ。正直、先述したが泉の危機感の無さにウンザリという事もありつつ、タツヤはどこにいっとんねんという気持ち悪さ。

 タツヤ、泥酔してるなら動き早すぎだろ。どうして大声で名前を呼ぶ泉に反応しないんだ。展開に悪意がありすぎだろ。最終的に泉よりも先に公園に辿り着いてたって何それ。いや、もうね、タツヤは後悔して然るべきだと思う。

 で、泉に関しては居酒屋で「最終便には間に合う」と言っている時点で、はぐれたらまずはフェリー乗り場で待っておくとかすればいいのに……(距離は不明)。なんかいろいろ、可愛い女の子を悲惨な目に合わせるためのお膳立てをしすぎてムカムカする。

 

●全体

①指名手配のモンタージュ

 綾野剛に似てる割合が8割wwwwと思って見てたけど、後から調べていたら〇〇編ごとにモンタージュを用意して、疑惑のある男性演者に微妙に似せるようにしていたらしい。すごい。それにしてはマツケンだけ顔の系統が違うから、正直マツケンへの疑惑はあまり無かった。

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【総評】★★★☆☆

「怒り」とは何に対することだったのか、というのがベタに考えられるが、まぁ「自分への~」とか「相手の~」というのはよくわかる。一番不明なのはしょっぱなの殺人を犯した家に大きく書かれた「怒」の文字だ。何に対しての怒りなんだろう。

世間への怒りだのなんだのは語り尽くされてもううんざりなので、犯人(この場合原作者)に明確な答えをもらいたいものだ(笑)。

原作読みたい……。読もう……。